【機動勇者ガンダム】 Fire氏 右厨世紀0085年8月31日 左夷奴1 30ばんちにて 「ガイ、聞こえる?」 「ああ、ばっちりだ」 ゆるやかに回転するスペースコロニー、その外壁部分に1機のコア・ファイターの姿があった。 それは一念戦争と呼ばれる「馬鹿の一念岩をも徹す」と揶揄される戦争で開発されたRX-78シリーズのMS、その心臓部分となる戦闘機である。 カラーリングは灰色。マグネット・コーティングを施された3号機であった。 先の女の声は通信オペレーターのラ・ミラ・ルナ、パイロットは長髪の伊達男、ガイである。 ガイはティターンズが今回計画した、作戦名「ジースリー(GGG)」を実行するために派遣されていた。 コロニー内に設置されたカメラからの映像がコア・ファイター内部のスクリーンに映し出された。 広場で、反地球連邦のプラカードを持った人影が抗議のデモを起こしていた。 各地で小規模の暴動やテロが起こっていた。すでに治安隊は撤収しているため、止める者のいないコロニー内部は無法地帯になっていた。官庁の建物は興奮した人海によって打ち壊され、どさくさに紛れて略奪をする者がいた。それを見て我も我もと同じように略奪にはしる者が続出する。 「醜いな・・・」 今から悪を退治しなければいけない。ガイは気を引き締めた。 ところ変わってここは、アレキサンドリア級重巡洋艦ネームシップ「アレキサンドリア」のブリッジである。ティターンズの旗艦だが、今回の作戦に限って艦長はゼノン・ティーゲルだった。ブリッジ内はティターンズとは思えない風景である。ゼノン以外の男性陣は、ティターンズを象徴する格好いい濃紺の制服ではなく、全員が連邦地上軍用のツナギの野戦服を着ていた。08小隊でカレン・ジョシュワやテリー・サンダースが着ていた野戦服である。ゼノン自身も、まるで映画の吸血鬼が着ていそうな裾の長いブラック・コートの軍服だった。ある意味、艦長にはふさわしい服装ではあるが・・・。 「長官、ガイは準備オッケーだそうです」 通信オペレーターのラ・ミラ・ルナが伝達した。女性クルーは何故か連邦の現地徴用兵用女性制服を着用していた。ホワイトベースでミライ・ヤシマやセイラ・マスが着ていたあれである。色はピンク、スカート丈のワンピース型の上着でファスナーを下まで閉じている。本来なら白いタイツ状のパンツを着用しているはずだが、今は生足が剥き出しになっており、艶のある瑞々しい太腿が目に毒だった。 「あー・・・ミラくん。私は長官ではなく、艦長なのだが」 「いいんですよ〜。どうせ小学生向けのスーパーロボットなんだから、細かいツッコミは無しです。せいぜい『一番偉い大人』とわかってもらえれば充分です」 ミラが身も蓋もないことを言うと、ゼノンは不思議に思った。 「いつからガンダムはスーパーロボットになったんだ?」 「やだなぁ〜、そんなものは今のガンダムを見てればわかるじゃないですか。あれをリアルなんて言ったら、リアル系に失礼ですよ」 頭の痛くなるような会話が交わされている間に、もうひとりの女性クルーであるネリィ・オルソンが報告した。 「長官、たいへんです!ガイが何者かに襲われています!」 こちらも同じ服装である。こちらの金髪お嬢様はほっそりとした淑やかな肢体である。ミニスカートからはみ出す両腿は、か細く長い。カモシカのような見事な脚線美だった。だが、ひとつだけバランスの悪い部位がある。 「ネリィくん、その無駄にでかい胸はなんとかならんのかね。何も無理してシリコ・・・グバァッ!」 ゼノンが言い終わらないうちに顔面に靴の踵がめり込んだ。ネリィの必殺技、踵落としが決まったのである。 「だって、仕方ないのではなくって?世のヲタクどもは金髪の外人は巨乳だって決めつけてるのですから。役作りもたいへんですのよ」 「長官殿〜!」 参謀のグレッグ・マインが叫んだ。とても参謀とは思えない肉体派のガタイをしている。いや、おまえ参謀無理だろとツッコミ入れたくなるような外見である。 グレッグがゼノンを助け起こすと、さすがスーパー系の艦長、1秒で復活した。顔についた足型もすっかり元どおりである。 「わかった。メインスクリーンに投影してくれたまえ」 まるで先ほどまでの事がなかったかのように、ゼノンがキリリとシリアスな顔で命じた。 ネリィが復唱する。 「了解。メインスクリーンに映します」 「何だ、こいつは!」 一同が驚愕した。ガイは謎の未確認物体と戦っていた。その姿はまさしく 「ゾイ○だな」 「ゾイ○ですね」 「ゾイ○ですわね」 「ゾイ○じゃねーかよ、おい!」 TMF/A-802「バクゥ」であった。なんでこの時代にこの機体があるのかはスーパー系なんだから気にしない気にしない。 ゼノンはすぐ、正気に戻って命令した。 「これより、謎の未確認物体を敵として認定!名称を『ゾイドー』とする」 「いや、それ全然、伏せ字の意味ないし」 ミラが冷静にツッコミを入れた。 ガイはゾイドーと戦っていた。ミラが頭にかぶったヘッドセットの受信機に、ガイからの要請が入る。 「ダメだ!このままじゃ埒があかない。合体させてくれ」 「長官、ガイから最終合体の要請がきています。どうしますか?」 ゼノンは机の上で両手を組み、口に当てた。司令官が必ずやる、お決まりのあのポーズである。なんで艦長席に机があるのかは、野暮なので突っ込まないように。 「ネリィくん。最終合体の成功率は?」 「シミュレーションでは、1%です。実戦で行うのは危険すぎます」 それを聞きとがめてグレッグが叫んだ。 「てやんでぇい!それを成功させるのが勇者だ。残りの99%は気合いと根性で補えばいいだろーが!」 ゼノンが冷静に諭した。 「作戦参謀、それは違うぞ。『気合い』と『根性』では気力とHPしか補えない。このような確率論の場合は『必中』を使うべきだ」 どいつもこいつも、言いたい放題であった。そして、ついにゼノンが合体を承諾した。 「よし!ミラくん。ファイナルフュージョン、発動承認だ!」 「了解!ファイナルフュージョン、プログラムドラァァァイブ!」 ミラがコンソール上にある緊急発動スイッチに拳を叩きつけた。 アレキサンドリアからガンダムの上半身と下半身パーツが射出される。さすがはスーパー系、1%の確率で合体は成功した。 ここに灰色の勇者、G-3ガンダムが誕生した。 ガイは早速、ゾイドーを仕留めることにした。 「よーし、さっさと終わらせてやるぜ!喰らえッ!」 いきなり必殺技とは掟破りである。 「アウシュビッツ&ピョンヤン!(地獄&天国!)」 G-3ガンダムのマニピュレーターは左右それぞれ名前があった。右がアウシュビッツ、左がピョンヤンである。この左右のパンチを同時に繰り出すことで、威力を倍増させるのが地獄&天国と呼ばれる必殺技であった。 深くは突っ込まないように・・・かなりやばいネタなのはわかっている。 とりあえず、G-3のパンチはゾイドーに命中した。 「き、効かないっ!?」 そりゃ、ただのパンチが効くわけがなかった。おまけにスーパー系でいきなり必殺技を使うと、通じない確率は100%である。 「くそっ、こうなったら、Gハンマーだ!Gハンマーをくれ!」 「長官!」 ミラが懇願するような目でゼノンを見た。ゼノンはあのポーズでしばし悩んだ後、決断した。 「わかった。Gハンマー、発動ショ――――ニンッ!」 ゼノンは懐からセキュリティキーを取りだすと、カギ穴に差し込んでひねった。 「了解!Gハンマー、セイフティ・ディバイス、リリーブ!」 ミラがセキュリティカードをカードリーダーに通す。Gハンマーが射出された。 ガイがGハンマーを受け取り、ゾイドーに鉄球を叩きつける。どうでもいいが、たかがガンダム・ハンマーに凄いセキュリティー・チェックである。 ゾイドーが怯んだところへ追い討ちのビームサーベルで真っ二つに両断した。最初から使えよとは敢えて言わないでおこう。 「さて、邪魔者がいなくなったところで、G3を設置するか」 ガンダムがG3ガスのタンクをセットした。これで後はご想像のとおりである。 暴徒どもが急に倒れ伏した。胸を掻きむしって悶える者、両手で喉を抑えて喘ぐ者が続出した。血反吐を吐き、痙攣を起こす者が相継いだ。苦しそうに助けを求める女、弛緩して失禁し、糞を垂れ流している者もいる。 いや、今回は少し違った。血反吐を吐いていたが、その血の色は緑だった。 「長官、これは・・・」 ミラが訊ねると、ゼノンが答えた。 「ああ、今回の敵はゾンビなんだ。ほら、血が緑だろう。あとは何の問題もない」 「・・・だって、痙攣してますよ。ゾンビが痙攣や失禁なんてしますか?それに、ゾンビにガスなんて効かないと思うんですけど・・・」 「ゾンビと言ったらゾンビなの!相手がゾンビなら人間じゃないんだってカ○コンも○ガも言ってるじゃないか」 「ひょっとして、敵はゾ○ダーじゃなくて、ゾンビーだったとかいうオチですか?」 「その通り!」 右厨世紀0085年、銀河はどこまでも平和だった。                 おしまい