【共に鼓動を聞く者たち】 343氏 シュミレーター室に着くと、シェルドがコクピッドに座る。 ルロイが横で簡単な説明をする。 シェルドもメカニックなので要領は心得たものだ。 調整を終えると、別の席にジュナスが座る。 「機体はフェアに、同じものにしようぜ。」 ジュナスの提案でハイザック同士の対決をすることになった。 ルロイがシェルドに耳打ちする。 「ジュナス相手なら、距離を保ってマシンガンだね。ミサイルは命中率悪いから、けん制ぐらいの気持ちでいたほうがいいかも。」 「…うん!やってみるよ!」 クレアの応援が聞こえる。 「いっけぇ〜、シェルド!」 「ちぇ!みんな敵かよ〜。」 ジュナスがつぶやく。 空間戦闘の設定で、シュミレーションがスタートする。 ジュナスは一気に距離を詰めてヒートホークを叩き込もうとする。 シェルドはとにかく後方に退く。 「シェルド、もっと斜めとか回り込むように距離をとるんだ!」 ルロイのアドバイスを必至に実行しようとするシェルド。 マシンガンを撃つ。 斜めに移動しながら、ジュナスはかわしていく。 「へへ!」 ジュナスは一気に距離を詰める! 「うわ!」 あわてて盾で殴るシェルド。 「お?上手いじゃん♪」 クレアが感心する。 やや、弾かれてバランスを崩したジュナス。 その間に再び距離をとるシェルド。 「退きながらもマシンガンを撃つんだ。」 「わかった!」 ルロイの言葉にシェルドも反応する。 「くっそ〜、思ってたよりやるなぁ!」 ジュナスが再び距離を詰めようとする。 だが、先ほどよりけん制が上手くなってきているシェルドは、上手く距離をとっている。 「…しょうがない。」 ジュナスは盾を取り外して、投げつけた! 「無茶苦茶だなぁ!」 ルロイは思わず呆れてしまう。 しかし、予想だにしなかったジュナスの行動に慌てたシェルドは一気に距離を詰められてしまう。 「もらった〜!」 ジュナスのヒートホークが振り下ろされようとしたとき、シェルドはにやりと笑った。 「これで、どうだ!」 至近距離でミサイルポッドを開放する! 「うげぇ〜!」 ミサイルを撃ちながら全力で後方に下がるシェルド。 ジュナスは爆炎に飲まれた。 「…うっそだろ〜!」 「わお!シェルドの勝ちぃ!」 「…やった!」 ジュナスが凹み、クレアがはしゃぎ、シェルドは静かにガッツポーズ。 「ひえ〜、本当に勝っちゃった。」 ルロイも驚いている。 「へへ、僕も戦えるんだ!」 シェルドはただ、嬉しかった。 シュミレーター室から出る四人。 「そろそろメカニックルームに戻らなきゃ。」 シェルドはジュナスらと別れ、スタンの元に向かっていった。 シェルドの影が見えなくなると、ルロイがジュナスに問う。 「今の、ワザとだよな。」 「!」 ジュナスが驚いて、ルロイを見る。 「…ジュナス、そうなの?」 クレアもジュナスを問い詰める。 ジュナスは頭もかきながら言った。 「半分、半分かな…。」 「どういうこと?」 クレアはさらに問う。 「いや、ヒートホークしか使わないつもりではいたよ。でも、負ける気はなかったっていうか…。」 ルロイはうなづく。 「そうだね、けん制のミサイルすら使わず…。」 さらに苦笑いする。 「盾を投げつけてたもんなぁ。」 三人は個室へと歩き出す。 「やっぱり、どこかでシェルドに勝って欲しかったんだろうな…。」 ジュナスが歩きながらつぶやく。 クレアは不安を口にする。 「…逆効果にならなきゃいいけどね。」 ルロイは淋しげに笑う。 「いいよな、友達がいると。」 「へ?」 ジュナスとクレアは一緒に間抜けな声を出す。 「…いや、僕は一年戦争で家族も友達も皆いなくなっちゃって、その後は変な研究所に入れられるしで、さ。うらやましいよ。」 ルロイの言葉に目をぱちくりさせてる二人。 が、クレアはすぐに笑みを浮かべ、ルロイの背中を叩く。 「何いってんの!私らもう友達じゃん!」 ジュナスも口を尖らせて言う。 「今まで俺のことを他人だと思ってたのかよ〜。」 ルロイは今度は申し訳なさそうに笑う。 「ごめん…。」 「だーっ!違うでしょ!」 クレアはルロイに食って掛かる。 「『ごめん』じゃないでしょ!嬉しいときは『ありがとう』!」 「…あ、ありがとう」 ルロイの言葉にクレアが納得する。 「よろしい!」 「はは、じゃあ、また!」 ルロイが自分の部屋に戻る。 ジュナスが自分の部屋の前に来ると、不意に固まる。 「じゃ、じゃあ、また…。」 妙に緊張した様子でドアを開ける。 クレアはその様子に顔を赤くして、ジュナスに後ろから蹴りを入れる。 「何を期待してるの、マッタク!」 ドゲシャア!と派手な音がしてジュナスは部屋にぶち込まれた。 クレアは早足で自室に向かう。 「…う〜ん、調子付かせるもんじゃないよね〜。」 独り言を発し、部屋に入る。 ジュナスはしたたかに打ち付けた額を押さえ、ベッドに倒れこむ。 「別に、何も期待してなんか…。」 つぶやき、天井を見る。 「今日も明日も戦闘か…。」 自分の今日の戦いを振り返る。 決して上手くはなかった。 格闘戦にはそれなりの自信があった。 が、結局はあしらわれてしまった。 「…あのガルバルディのパイロット、何者なんだろう?機体性能じゃアレックスの方が上ぐらいの気持ちでいたのに…。」 簡単に間合いを制され、こちらの攻撃で当たったのは苦し紛れの蹴り。 サーベルでの一撃は一度も当たらなかったのだ。 「第一、最初の攻撃は完全に不意を突いたのに…。」 スタンの言葉を思い出す。 一年戦争時からのベテラン。 「…もっと強くならないと、生き残れない。誰も守れない。」 ジュナスは寝付けず、苦悩した。