【共に鼓動を聞く者たち】 343氏 ハイスクールの帰り道、ジュナスは突如、不安に襲われた。 (な、なんだ!?) 今までにも突然に何か予感めいたものを感じることはあった。 しかし、今回のはかつてない大きな"なにか”だった。 (僕は、何を恐れてるんだ?) 走り出さずにはいられくなり、がむしゃらに路地を駆け抜けていく。 しかし、何処に行っても不安は消えない。 コロニー全体に暗闇が押し寄せるような気がした。 (宇宙港!外に出る!なぜ?いや、でも!) ジュナスは行くべき進路を定め、尚も走った。 そこへエレカが併走してくる。 「お客さ〜ん、お急ぎでしたらどうですかぁ〜?」 「クレア!」 走るエレカに飛び乗るジュナス。 「宇宙港!急いで!」 「はぁ?」 「なんも感じないのかよ!?」 「また、例の勘ですか。選択問題のテストで赤点取ったジュナス君の勘はアテにならないからなぁ〜。」 「いや、なんか、今度のは絶対にヤバイ・・・。」 「またまたぁ〜。」 オチャラケた返事をしていたクレアだったが、ジュナスの真剣なまなざしに少し押された気がした。 「わかった、シャトル見学も悪くないよね。」 「さすがにこれは修復はむりかなぁ。」 「シェルド!」 機械いじりをしている少年にエレカを飛び降りて向かうジュナス。 「シャトルは動かせる?」 「ジュナス、またやるの?この前だって無断で宇宙に遊びに行って停学食らったじゃんか。それに、今度やったら僕もオヤジさんにここから追い出されちゃうよ。前だって、本当に許してもらうの大変だったんだから。」 「それどころじゃないんだよ!いけるんだろ!」 「まあ、やろうと思えば・・・。」 エレカを止めてきたクレアが会話に加わる。 「いいじゃん、シェルド、今度はバレないようにやればいいじゃん!」 「そうはいっても・・・、あ、ジュナス!かってに乗り込まないでよ!」 「急ぐんだ!」 「も〜!」 シャトルは小型で宇宙遊覧には丁度いいが、旅行向くような色物ではない。 そのかわり、操作は簡単でシェルドにも出来るものだった。 「あ〜、ばれなきゃいいけど・・・。」 シェルドは座席に着き、ため息をつく。 一方でジュナスの顔色が先ほどよりも青ざめてることに気付いたクレアは、さすがに心配になった。 「ちょっと、ジュナス大丈夫?・・・震えてる?」 「こ、恐いんだ、よく分からないんだけど・・・。」 シェルドは後方確認してゾッとする。 「げぇ!オヤジさんだ!」 「ガキども、また無断でシャトルに乗りよって!」 「ひえ〜、さっさと出発しちゃおう!」 青ざめ、下を向いていたジュナスが突然大声でシェルドを止める。 「待て!親父さんも乗ってもらおう?」 「はぁ?何言ってんだよ、ジュナス!」 「ガキども〜!」 宇宙港で整備員をしているダイスが後方ハッチより乗り込んでくる。 「さっさと止めろ!」 「行け!シェルド!」 しかし、ダイスが無理やりシェルドを操縦席から引きずり落とす。 「いってぇ!」 「この、バカヤロウが!」 だが、次の瞬間操縦席にはバカヤロウならぬバカオンナが座っていた。 「出発進行!」 クレアが元気よく、起動ボタンを押した。 クレアは意外なほど上手い操縦でゲートをくぐり、宇宙に向かう。 「ああ、今すぐ引き返せ〜!」 ダイスの怒号が響くがクレアは楽しそうに笑っている。 シェルドも呆れてながらも笑っていたが、ジュナスの震えに気付き心配になる。 宇宙に出た。 彼らを迎えたのは無数の星、そして見慣れぬ戦艦・・・。