【Smileless,Smile】359氏 「…そろそろ…だな」「ああ」 「長かったな…」「それもあと少しの辛抱さ」 「いや、まだまだこれからだ。何せ優劣を付けねばな」「おや、随分と余裕だな?」「そりゃそうさ。お前のサンプル、アレは何の冗談だ?」 「それはこっちのセリフだ、サンプルは若ければ若いほど良い」「それはそうだが、お前のは考え物だな」 「フン、何とでも言え。キサマみたいな二流には俺の意図など理解できないだろう」 「ま、どちらにしろこの戦いの結果で解るさ… そう、強化人間こそ最高のパイロットだとな…!」 「そうだ。そして俺たちこそがこの世界で最も選ばれた者だという事もな」 「だが、私はお前のモノに不満が残る」「ほう、何故だ?」 「まず、一つ。もしソレにパイロットとしての資質が備わっていなかったらどうする?」 「愚問だな、棄てるだけだ。 それに、真のNTならそんなもの後からでかまわんさ」 「…そうか。」「キサマは心配性だな。だからロクにサンプルも出来ていない」 「別に私のことはかまわないが、私のサンプルにケチをつけて貰いたくないな。 奴は戦士だ。奴にNTのチカラがあれば誰も敵わぬ」 「随分と同情的だな? まあ、理解できなくはない。キサマにはソレしかいないのだからな。 その点、私は違う。コマは揃えている。」 「そうか。じゃ、通信を切るぞ」「今度会うときは戦場…だな」 「…死ぬなよ?」「そのセリフ、そのままキサマに返してやる」 「…お目覚めかい?」「…アア。実に不愉快だがな」 「何があった?」「…夢を見た…それだけさ、話は覚えちゃいない」 「…そうか」「で、一体何と闘えばいいんだい?」 「機械の人形さ」「…MDか。フン、面白くない」 「どうしてだ?」「アタシは戦士と闘いたいんだ、あんな意思のないオモチャとは遊んでられないね」 「わかった。が、油断するなよ。アノ野郎のガキどもに戦いのなんたるかを見せてこい、J」 「…アタシをその名で呼ぶな…アタシはジェシカ、ジェシカ・ラングだ……!」 「オイ、起きろ。時間だ」「…ハイ」「わかりました」 「シゴトは簡単だ。クソッタレな機械どもをさっさと壊して、 キサマらの優秀さを見せ付けてこい」「ハイ」「わかりました」 「あと、もしこの俺に逆らうものがいたなら…容赦なく殺せ。 S、R、わかったな?」「…ハイ」「…わかりました」 「…S」「何でしょうか?」 「改めて問う。キサマはなんだ?」「…闘うために作られた…お人形…です」 「そうだ、そしてそれはR、キサマにも言えることだからな。 R、キサマにとって必要なもの、イラナイものはなんだ?」「ハイ。必要なのは…チカラ、イラナイものは…ココロです」 「素晴らしい、その通りだ。よし、出撃に備えとけ」「ハイ」「わかりました」 「J…いや、ジェシカ」「…さっきの、聞こえてたのかい?」 「初めに言ったろ?私はあくまでも君を強くするための存在だ。 あとは君の好きにやらせてきたし、これからもそのつもりだ。 君がいてこその私だ。その私に落ち度があるなら直すだけだろう?」「…勝手にしろ、それに気安く呼ぶな…」 「そうかい。ところで、そのMSの居心地はどうだい?」「…不快だ…ただただ不快だ。早くここから出せ!」 「よし、ハッチ開けろ!」「タイタニア、出るぞ!」 「…行ったか…輝いてこい、私の"作品"よ…」 「何!?アイツのはもう出たのか!? ええい、何をグズグズしてる!早くSとRを出させろ!」 「エビル・ドーガ、ノイエ・ジールU、発進完了です!」 「わかりました、ノイエ・ジールU発進します!」「大丈夫…ワタシが死んでも代わりはいるもの…エビル・ドーガ出ます…」 「チッ、アタシを満足させてくれる奴がいなけりゃ張り合いがないじゃないか!こんな機械…一撃で墜とさしてもらうよ!」「………」 「なんでだ?当たったじゃないか!なんで墜ちないんだ!」「チッ、連中…開発に成功してたとはな…」 「お前か、どうなってるんだ!?」「プラネイトディフェンサー…射撃を無効にする…」 「クッ、そうか…射撃が無駄なら…この剣で…!」「………!」 「墜ちたか…!カラッポのくせに、舐めたマネをする…ますます気に入らない!…こうなれば気が済むまでやらせてもらう!このアタシを怒らせたこと…後悔させてやる!」 「やあ、どうだい私の"作品"は?素晴らしいものだろ? すでに一機で四機のMDを葬った。これを戦士と呼ばずして何と言う」「キサマの自慢話は済んだか?そういった自慢は俺のも見てからにして欲しいな。 まあ、見てしまってからでは遅いかもな」 「オイ、わかってるな?アイツらより多く倒せ…それだけだ」「ハイ」「わかりました」 「………」「あれが標的…?射撃では意味がない…なら…!」「待って…ここはワタシに…任せて」 「"ソレ"を使うの?」「エエ、"バグ"はワタシにしか扱えないから…」 「わかった。ワタシも援護するわ」「…お好きにどうぞ…」 「ハハハ、どうだ!俺の"バグ"と"ファンネル"、そして"強化人間"は! 1ダースの機械のオモチャ達が三分足らずで全滅だ! これも全て俺のお陰だ!キサマなど話にならん!」 「おい、使いすぎじゃないか?彼女達の精神状態に問題はないのか?」 「フン、負けおしみを。言ったろう?駄目になったら棄てるだけだ。 いいぞ!もっと、もっと壊せ!そしてこの俺の才能をOZのクソヤロウ達に見せ付けろ!」 「アイツ、NTの幻想に取り付かれたか…?」 「ジェシカ、見えるか?あの二体が」「ああ…嫌と言うほど… かなりのプレッシャーと不快感を伴ってな…だが、アイツらは戦士の器じゃない」 「何故だ?」「与えられた役目を機械的にこなす…あれじゃMDと変わらない。 それがアタシに不快感となってやってくる…」「そうか…一応言っておくが落とすなよ? ああ見えて私の友人のだからな」「そうかい、歯応えのない…!」 「オイ、R。敵はどうだ?」「ハイ、大体は撃破したかと」 「いや、そうじゃない。アノ白いのだ」「何度か妙な感覚には成りました。 が、問題はありません」 「そうか。S、キサマはどうだ?」「一緒です。プレッシャーを感じはしました。 しかし任務に支障はありません」 「そうか。キサマら、"ヤツ"は落とせそうか?」「相当の腕です。が、墜とせないレベルではありません」「私たち二機なら、勝気はあります」 「よし、人形がいなくなったら…"ヤツ"を殺れ。"作品の制作者"は一人で十分だ」 「…ハイ」「わかりました…」 「…あらかた片付いたようだな? もう満足か?」「この程度で?ハン、まだ物足りないよ。 倒せば倒すほどイラツいてくる…」 「まあいい。早く戻ってきてくれ」「…いや、最後のお客さんだ」 「これは…バグ?まさか…!」「そう、そのまさかだよ」 「オマエ!?何を考えてるんだ!?」「"強化人間"をコロニーの象徴として地球と闘う… キサマと共に打ち立てた信念に変わりはないよ。 ただ、"制作者"が二人じゃ多すぎる。だから…な?」 「クッ…」「安心したまえ、まだ死にはしない。 そう、キサマの"作品"が俺のより劣っているのを見届けてからだ。 それより先にヘタに動いてみろ…そのバグが『ボンッ』だ、おとなしく見ていたまえ」 「フン、こんなバケモノの中にガキか…」「…アナタを…殺します…」 「オモシロイ、戦士の器でない奴らにこのアタシが墜ちるはずがない!」「敵は一人…ワタシ達の動き…読めるかしら?」 「…ファンネルか!?だが!」「…バグ、射出します!」 「厄介だな…迂濶に動けないが…一つ誤っている!」「クッ、どうして!?どうしてなの!?MDならもう墜ちているのに…!」 「そう、戦う相手だ!アタシは機械じゃない…ジェシカ・ラング…戦士だ!」 「キャアァァ!」 「ジェシカ、いいぞ!」「ええい、被害はどうなってる!?」 「…左腕部をヤラレました…まだ闘えます…!」 「おい、もういいだろ!」「五月蠅い!S、裏手から攻めろ!」 「…わかりました…攻撃を…開始します!」「今度はこっちからか!鬱陶しい!」 「いや…コイツ…さっきより動きが鈍い? 精神力を使い果たしたか?」 「クソッなんで当たらないんだ!? S、どうなってる!?」 「ハァ、ハァ…苦しい…けど…まだ闘える…!」 「彼女、このままだと狂っちまうぞ!本当にいいのか!?」「次にその口を開けてみろ!キサマを殺す!」 「(どうして、どうしてなの?ワタシはアイツ何故落とせないの…?)」 「(聞こえているのだろう?返事をしろ!)」 「(ジェシカ…?アナタは敵よ!話しかけないで!)」 「(…だから勝てないんだ…!)」 「(…!今、なんて!?)」 「(そんなココロだから…勝てないと言っている!本当にいいのか!?)」 「(アナタに何がわかるって言うの?このワタシのこと、何も知らないくせに!?)」「(…知っている!)」 「(ウソ、ウソよ!何を知っているっていうの!?)」 「(今は自分の殻に閉じ籠って…そこから抜け出そうとしている…!)」 「(そんなことはないわ!あの人のためなら…ワタシ…!)」 「(恐いから…だろ?)」 「(……ッ!)」 「(自分の心に嘘付いて…そうでもしないと棄てられるから…でも…死にたくはない。だからあんな奴に従順なフリをする!)」 「(ワタシ…ワタシ…強くなるために…だから…!)」 「(ならあんな奴の言いなりになるな!自分で考えて動け!)」 「(自分で…動く…?自分で…考える…?)」 「(そうだ!その心の鎖、切らなければオマエに勝ち目はない!)」 「(…ダメ…!アノヒトガ…!ワタシヲ…ステル…!)」 「(そうか…所詮、オマエも戦士でない、タダの人形だったか… ならアタシは、オマエを倒す!)」 「(…ニンギョウ?ワタシハニンギョウジャナイ… ワタシハ、レイ…)」 「ターゲット、確認…」 「チッ、さっきの奴!あと少しだというのに!」 「(………!)」 「(いつまで黙っているつもりなんだい!?)」 「(アナタは何故…話しかけてくるの? あの子ともさっきまで…)」 「(聞こえていたか?なら話が早い! なぜお前は闘うんだ?)」 「(そうやって…ジャマをする…あの子も苦しめて…)」 「(アイツは今闘っているんだ! 今までの弱かった自分とな…! オマエはどうして闘っている!?)」 「(ワタシには…闘うことしか許されてないから…! 理由なんて…ない!)」 「(そうやってウソをついて…なんで自分に素直「(ウソなんかついてない…ワタシには…ココロなんてないから…!)」 「(アイツが…アイツがそう言わせてるんだな!?)」 「(あの人が…拾ってくれたから…)」 「(そんなもの…捨ててしまえ!)」 「(ダメ…捨ててしまったら…何も残らない…)」 「(なら…お前を倒す!)」 「(イヤ…死にたくない…人形のまま死にたくない…!)」 「(…言ったな!)」 「(ウッ………)」 「(何故その気持ちを隠した!?)」 「(ウッ…ウゥ…)」 「(…泣いているのか?)」 「(ウッ…ワタシ…泣いてるの?どうして…!?)」 「(…あるじゃないか…リッパな"ココロ"が…)」 「(チガウ…ワタシニハ…ナイ…)」 「(そうやって自分にウソをついてアタシに勝とうというのかい? …フザケルナ!)」 「(アナタハ…ナゼ…タタカウノ…?)」 「(アタシが戦う理由?… アタシ以上の戦士と戦い、死ぬ…それだけだ…)」 「(…ソレダケ…?)」 「(ああ、それにその理由、叶うかも知れない…)」 「(そこの赤いのも聞こえているのだろう? オマエら…オマエらが誰の言いなりでもない純粋なオマエらなら…アタシは負けていた。 オマエらがあんな奴の言いなりだから…それがオマエらの敗因だ)」 「(ワタシ…いや、ワタシたち…変わらなかったら勝てなかった…じゃあ、何故アナタは? アナタはワタシたちを…)」 「(つまらないからな…折角の戦士の卵を潰すほど馬鹿ではない。 しかも簡単なことでその殻は破れる。 アタシは孵化を手伝っただけさ…)」 「(…ワタシは…ううん、ワタシたちはこれから…どうすればイイの?)」 「(泣き止んだかい?嬢ちゃん。 そうだね…なんならアイツにでも頼めば良い。 アイツも強化人間の扱いなら慣れてるしな… ああ、そういえば…まだ名を聞いてなかったな… あるんだろう、立派な名が? クダラナイコードネームなんて捨ててしまえ…)」 「(ジェシカさん…だよね? ワタシは…レイチェル・ランサム)」 「(ワタシは…シス、シス・ミットヴィル。 ジェシカさん…ワタシ、人だから…人形じゃないから泣けるんだよね…)」 「(そうだな。レイチェル…シス…いい戦士になれよ…!)」 「何故動かないんだ!?」「どうしたんだ…?まさか…これが?」 「一体なんだ!?」「NT同士は心と心… NTのみが理解しうる世界があると聞く… 今まさにその世界に彼女達がいるのだろう…」 「そうか…主砲、あの白いのに向けろ!」「おい、何をするつもりだ!」 「ゴミどもがやらぬなら…こちらがやるまで!」 「あの戦艦…マズイ、このままじゃ仲間もろとも撃つ気か!? アタシさえ落とせばいいなんて、アノゲス野郎、とことん狂ってやがる…!」 「ククク、気付いてももう遅いよ…主砲、撃てェー!」 「…この機体なら!」「シス!?止めて!」 「S、言ったろう?ココロなんて持つな、って… まあいい、キサマのバグ、使わせて貰うぞ…!」 「シス!?ねえ、応えてよ!」「落ち着け!動力部は持ってかれてない、それよりも… あのバカ、なんで動かないんだ!クッ、レイチェル、戦いは後だ! アタシはあのバグを壊す!」「ジェシカさん!?待って、待ってよ…」 「オイ、狙われているんだぞ! 待ってろ、バグならアタシが壊す!」「来るな、ジェシカ!これは罠だ! 墜ちるのはこの艦だけでいい!」 「もう手遅れだよ…ありったけのバグを爆発させろ!」 「チッ…エンジンがイカレたか…ジェシカ、大丈夫か?」「………」 「まさか、私をかばって…!」「そうだ…俺にたてつく奴は死んでしまえばいい!」 「そんな…ジェシカさんが…!」「R、命令だあの裏切り者と死にぞこないを消せ!」 「……」「どうした?臆したか?まだキサマには利用する価値がある… この命令を聞けば責めはしない…」 「(そんな、どうしたらいいの…?)」 「(…逃げるのか?)」 「(ジェシカさん!?生きてるんですか!?)」 「(アタシの心配はいい…それよりも逃げるのか?逃げて、また元に戻るのか?)」 「(ワタシはワタシは…!)」 「(レイチェル…)」 「(…!?シス!)」 「(レイチェル…ウソをつかないで… 自分の気持ちを…裏切らないで… …ワタシ…そんなレイチェル…好き…大好き!)」 「(ありがとう、ジェシカさん。 ありがとう…シス… ワタシも好きだよ、アナタのこと…)」 「答えろ!答えなきゃ撃つぞ!」 「サヨウナラ…これが答えよ!」 「マサカ…俺の人形にやられるとは…フフフ、だがやはり俺の研究に間違いはなかった…!」 「イイエ、アナタは一つ、間違っていたわ… ワタシはレイチェル・ランサム、人形じゃない…人間よ!」 「終ったわ、シス…待ってて…今迎えに行くから…!」 「…ジェシカさんは、ジェシカさんはどうなったんですか!?」 「回収は出来た…生きてはいるが意識は戻らないだろう… いわゆる廃人ってヤツだ… いつ目が覚めるかもわからない… そちらの彼女はどうだ?」 「シスは大丈夫です…。 ただ、ショックで言葉が…」「そうか。キミはこれからどうするんだい?」 「…旅に出ようと思います。シスといっしょに」「何かアテはあるのかい?」 「ありません。けどシス、それに…ジェシカさんがいます」「そういえば、彼女は何か言ってたかい?」 「いえ…でもワタシが覚悟を決めたとき、 ジェシカさんは満足そうでした」「最後まで戦士だったか… 私は間違っていたのかな…?」 「そんなことはないと思います。ジェシカさんがいなかったら…」 「ありがとう。 …もう時間かい? …子供二人の旅だ、体には気を付けて」 「こちらこそ…あの、こういったら何ですが、 ジェシカさんを…頼みます」 「(シス…)」 「(何、レイチェル?)」 「(…ずっと、ずっと一緒にいようね…!)」 「(……ッ!………ウン!)」