【半熟兵士と踊る空】692氏  適当な用事を言いつけてレイチェルを部屋の外に出したエリスは、念のため室内に自分以外誰もいないことを確認し、デスクの上の端末を起動した。必要なコードを打ち込み、IDとパスワードを入力する。すぐに本社内のNT研直通の秘匿回線が開いた。  「遅かったな、エリス」  端末のモニターに口ひげを蓄えた壮年の男が現れる。Gジェネレーション内ニュータイプ研究所所長、ハワード・レクスラーだ。  「さて、では今日の記録を聞かせてもらおうか……エリス?」  デスクに頬杖を突いたハワードが、紳士然としながらもどこか嫌味な笑みを浮かべて、エリスに呼びかける。  エリスは努めて無表情を装いながら、戦闘の経過を話し始めた。  ハワードは満足げにそれを聞いていたが、特にレイチェルが精神の均衡を崩して見境なく暴れたという部分で、さらに笑みを深くした。  「やはり、レイチェルにはお前という存在が必要不可欠らしいな……エリス……?」  素肌を汚れた手で撫でるような不快な調子で、ハワードはさらにエリスに呼びかける。エリスは表情を消したまま、ただ無言でそれを聞いていた。  「一人では精神の安定すら保てない不良品か。まあ、もともとアレは強化人間のデータを取った後廃棄する予定だったから、ちょうどいいといえばちょうどいいのだがな」  勿体つけた口調でゆっくりと話しながら、画面の中のハワードがちらりとエリスの様子を窺う。エリスは無言を保ち続けていたが、瞳からはかすかに怒りが滲み出ていた。気付かぬ素振りで、ハワードはさらに続ける。  「実を言うと、データ取り自体はそろそろ終了に近付いているのだよ。後数回ほど実戦のデータを取れば、安定した強化人間の製造法を確立することが出来るだろう。そうなった暁には……はて、役立たずのレイチェルをどうしたものか?」  ハワードが首を傾げる。エリスの眉間に皺が寄り、目つきが鋭くなった。ハワードの笑い皺がまた深くなった。  「私とて鬼ではないからな。ゴミにも劣る失敗作とは言え、我が子同然のレイチェルに再利用のチャンスを与えてやりたいものだな……さてどうしたものか」  エリスの表情の変化を楽しむように、ハワードはゆっくりと指を折る。  「そう言えば、愛らしい少女の剥製を集めている友人がいてな……いや、私も一度彼のコレクションを見せてもらったが、なかなか素晴らしいものだった。あの列にレイチェルが加わったらさぞかし美しいことだろうよ」  エリスは答えない。俯いて唇を噛み締めた。  「他には……そうそう、あいつは人肉愛好者だったな。人の四肢をノコギリでじりじりと切り取って、断末魔と血の雨を浴びながら生肉を食すのがたまらなく好きらしい。レイチェルの悲鳴はなかなか耳に心地よかったな。これもまた捨てがたい」  エリスは答えない。肩が静かに震え始めた。  「ああそうそう、人身売買で儲けている奴もいたな。レイチェルなら高い値がつくだろう。その後幸せになれるチャンスだってある。人生ギャンブル、結構なことだ。まあ最も、大抵の場合は散々弄ばれた挙句に豚の餌と化す運命が待っている訳だが。それもまた人の役に立てていいかもしれん」  エリスは答えない。両手に血が滲むほど、強く拳を握りしめた。  「いや、やはり私の手元に置いておくのが一番だな。ちょうど地下室の一つに空きが出来たところでな。レイチェルを日の当たらない暗い部屋に閉じ込めて毎日少しずついたぶってみようか。あの子の泣き叫ぶ声を聞きながら余生を過ごすのもなかなか」  「止めて下さい!」  エリスは頭を抱えて絶叫した。抑えきれない激情に顔が真っ赤に染まっている。瞳には涙が滲んでいた。ハワードは、それをうっとりとした表情で眺めながら、ゆっくりとエリスに問いかける。  「私が憎いか、エリス? この体を八つ裂きにしてやりたいと、MSの手で握りつぶしてやりたいと、死をも超える苦痛を与えてやりたいと、そう思うかね、エリス?」  エリスは視線に憎悪を込めてハワードをにらみつけた。しかし、ハワードは動じることなく、むしろ優しげに笑ってみせる。  「だが、お前には出来ない。出来ないのだよエリス。それはお前が一番良く知っているはずだ、そうだなエリス・クロード?」  エリスは苦しげに顔を歪めて押し黙る。ハワードは楽しくて仕方がないというように、  「そうだエリス。お前は私に逆らうことができない。何故なら、お前の……いや、レイチェルの運命は常に私の手に握られているのだからな」  ハワードは一枚の紙を取り出し、ぴらぴらとエリスに向けて振ってみせる。  「これが何だか分かるかね? そうだ、レイチェルの異動申請書だ。これを人事部に提出するだけで、レイチェルは私の手の中に戻り、哀れ一生日の目を見ることなくクスリ漬けになるという寸法だ」  ハワードは愉快さを隠そうともせず、声を立てて笑う。  「悲劇だなエリス。お前が自分の命よりも大切に思い、他のどんな物よりも愛しく思っているレイチェルの存在は、こんなちっぽけな紙切れ一枚に左右されるという訳だ。やれやれ、人間の運命というのはかくも残酷で悲劇的なものか! まあ、私にとっては最高の喜劇だがね」  ハワードは紙切れを放り投げ、顔を伏せいているエリスをじっと見つめた。  「エリス、レイチェルを助けたいかね? この狂った企業の……いや、私の手から彼女を解放し、普通の少女としての人生を歩ませたいと思うかね、ん? 不可能なことではないぞ。全て私の機嫌一つなのだからな。どうだ?」  首を傾げてみせるハワードに、エリスはわずかに唇を開き、か細い震える声で言った。  「そんなことを言って……レイチェルを解放する気なんて少しもないくせに……!」  「そのとおりだ」  満面の笑顔で、ハワードは頷いてみせる。  「私はレイチェルを手放すつもりなどさらさらない。私が現在最も楽しみにしていることは、レイチェルが殺されることに怯えながらも必死に任務をこなす健気な君を嘲笑い、希望の芽を一つ残らず摘み取ってやることだ。これに勝る愉悦など何一つないのだよ」  ハワードはさらに追い討ちをかける。  「君がいかに忠実に私に従って任務をこなそうが、どれだけいいデータを寄越そうが関係ない。君がどんなに奮闘しようとも、私の気が変わることなどあり得ない。分かるな?」  エリスは全身の震えを抑えながら、ゆっくりと頷いた。  「それでも君は私に従うしかない。なにせ、私がちょっと紙切れ一枚提出するだけで、レイチェルは明日にでもクスリ漬けになる運命なのだからな。君がしていることは全て無駄だ。君がレイチェルを救うために出来ることなど何一つとしてない。それでも私に従うのかね、エリス・クロード?」  エリスは頷くしかない。ハワードの含み笑いが、部屋の空気を澱ませていく。  「愉快だな。実に愉快な見世物だよエリス……さて」  不意に、ハワードは少しだけ口調を変えた。嫌味なものから、汚らわしいものへ。  「エリス……再三言っていることだが、私は人間をいたぶるのが大好きなのだよ。無論、君とて例外ではない。いや、むしろ、君は私が見てきた中で一番弄びがいのある玩具だ……」  ねっとりとした視線が、モニター越しにエリスの体を這いずっていく。ハワードは、実に優しい笑顔で、エリスに命令した。  「まずは、その邪魔なものを脱ぎたまえ」  エリスは一瞬身を強張らせたが、すぐに堪えるように目を閉じると、上着のボタンを外し始めた。床に衣服が散らばり、エリスの裸身が露わになっていくのを、ハワードは微笑んだままじっくりと眺めていた。  「隠すな。手をどけろ」  一言そう言われ、エリスは羞恥に顔を染めながら、胸元を隠していた腕を脇に垂らす。  室内灯に照らされる白い素肌を、ハワードのねっとりとした視線が撫で回していく。エリスは唇をきつく噛んでそれに耐えていたが、不意にハワードがうっとりとした表情で口を開いた。  「何度も言うことだが……何度でも言ってやるが、君は実に美しい。古の女神に例えたくなるほどに完璧な、素晴らしい肢体だ」  ハワードがモニター越しにエリスの体に触れようとするように、手の平を伸ばしてくる。  「想像したよ。数え切れないほど想像したとも。君のその傷一つない体のどこに痣をつけてやったら一番よく似合うか、とね。ああ、君はどんな声で泣いてくれる? どんな風にその愛くるしい顔を歪ませるのか? 全く、君を思う存分嬲ってみたくてたまらないよ、私は」  ハワードは嗜虐性を隠そうともせずに喋り続ける。エリスは身を引くこともハワードの目から体を隠すこともなく、ただじっと目を閉じて耐えていた。  「ああ、そうだ」  不意に、ハワードは思いついたように、エリスに向かって人差し指を突き出した。  「エリス、私の指をなめろ」  「なっ……」  エリスは言葉を失った。ハワードは催促するように顎をしゃくる。  「どうした、早くしろ。モニターに舌を這わせるだけでいいんだぞ」  「そんなことに何の意味が」  「馬鹿馬鹿しい、と思うかね? 私としても本当なら心行くまで君を痛めつけてみたいのだが、モニター越しにはそんなことは出来んしな」  エリスは動かない。ハワードは嘲けるように鼻を鳴らす。  「どうした。分からんのかね、今日はそれで勘弁してやると言っているんだ。従わなければどうなるか、分かっているだろう?」  脅し文句。エリスは顔を歪めながら屈みこみ、迷いながらもモニターに顔を寄せた。舌を突き出し、ハワードの指先が映っている部分に近づける。  「何だその様は。それでなめているつもりか?」  少し不機嫌そうに、ハワードが目を細める。エリスは動きを止め、一旦舌を引っ込めた。数瞬躊躇った後、覚悟を決めたように目を閉じた。舌の表面をそっとモニターに下ろし、ハワードの指先が映っている辺りに這わせ始める。スクリーンが唾液で汚れ、彩光が乱れる。ハワードの口ひげが満足げにひくついた。  「なかなかいい眺めだな。最も、カメラの位置的に君がモニターをなめている顔を直接見ることは出来ん訳だが」  ハワードがなぶるようにそう言う間も、エリスは恥辱に顔を歪めたまま、ただ一心不乱に舌を動かし続けた。  「ほら、舌を止めるなよ。勝手に休んだらすぐにレイチェルは地下室行きだぞ」  舌の動きが激しくなった。口が塞がれ、息使いが荒くなる。ハワードは口元を押さえて失笑を浴びせかけた。  「情けない格好だなエリス。まるで獣だ。今の君の姿をレイチェルが見たらどう思うことか。え、想像してみろ」  エリスは答えず、這いずる舌も止まらない。ただ、歪んだ表情に刻まれた苦痛が、さらに大きくなった。ハワードはしばし舌が這いずる音に聞き入っていたが、やがて満足げに頷いた。  「よし。そこまででいいぞ」  エリスがすぐに顔を離し、口元を拭う。頬に少し赤みを残し、裸身を晒しながらも、その表情は冷静で、瞳には涙の欠片もない。ハワードはまた楽しげに唇を吊り上げた。  「君は強いなエリス。それは、妹のためならどんな苦痛にも耐えて見せようという、そんな表情だ。尊敬に値するよ。だからこそ滅茶苦茶に汚したくなる」  エリスは声を出さず、ただ黙ってハワードを睨みつけていた。ハワードは気分を害した様子もなく、むしろ心地良さそうに微笑み、組んだ両手に顎を乗せた。  「さて、君に一つ任務を言い渡そう。言うまでもないが、拒否権はない」  「分かっています。何をすればよろしいのですか?」  ため息を吐いて、諦めたようにエリスが訊ねると、ハワードはさらりと言った。  「シス・ミットヴィルを殺せ」  エリスが息を呑む。  「シスちゃんを? 何故です?」  「君なら分かるだろう? スタンのEXAMシステムとやらと私の強化人間はどちらが次期主力製品になるか、競い合っているところでね。聞けば今日、EXAMシステムの搭載機はレイチェルを遥かに凌駕する戦果を上げたそうではないか?」  「しかし、あれは不安定で、その上暴走の危険性を」  「それぐらいは私だって把握しているさ。しかし、暴走の危険性があるのはこちらの不良品も同じだ」  「それで、シスちゃんを殺してこちらの優位を築けと?」  「無論、シス・ミットヴィルだけを殺しても意味がない。EXAMシステム搭載機ごと宇宙の闇に葬ってやらねばな」  「誤射に見せかけて殺せと?」  「それでもいいが、ベストではない。EXAM搭載機は暴走して味方に襲い掛かった後、競争相手である強化人間によって撃破されねばならんのだよ」  「レイチェルにシスちゃんを殺させろと言うのですか!?」  「それは君が承知しまい。まあ、無理矢理命令してもいいのだが、正直言ってレイチェルでは当てにならんということもあってな。だから君にやれと言っている。後は適当に情報を操作して、強化人間の方がEXAMシステムなどより優れていると報告すればいいだけだ。簡単なことだとも」  それで、とハワードはエリスの顔を見つめた。  「やるかね? 無論、従わなければ」  と、これ見よがしに例の書類を掲げてみせる。エリスは無表情を保ったまま、一言だけで簡潔に答えた。  「分かりました」  あっさりとした決断に、ハワードが少し意外そうな顔をする。  「いいのかね? 一応、シス・ミットヴィルは君の仲間だろう?」  「関係ありません。レイチェルとシスを私という天秤にかければどちらに傾くか……あなたが一番良く分かってらっしゃるでしょう?」  ハワードは愉快そうに痩せぎすの体を揺らした。  「最高だなエリス。そうだ、君はそういう女だ。レイチェルさえ無事ならば後はどうなっても構わないのだな」  「レイチェル以上に優先するべきものなんて、この世に存在しません」  あくまでも淡々とした口調。ハワードは納得したように頷いた。  「うむ。そうだろうな。では戦果に期待するとしよう。ああ、そうそう」  通信を切る直前、ハワードは嫌らしい笑みを残した。  「君が失敗してもレイチェルは即刻本社に呼び戻すからそのつもりでな」  ハワードの顔が画面から消えうせる。エリスはしばらく表情を消したまま佇んでいたが、唐突に顔を歪め、モニターに向かって拳を振り上げた。  「ただいま、行ってきたよお姉ちゃん……?」  部屋に入ってきたレイチェルが、エリスの姿を見て目を見開いた。  「何してるの、お姉ちゃん!?」  「……何でもないわ。少し汗をかいたから、着替えようとしていただけ」  振り上げた拳をさっと下ろし、エリスは穏やかに微笑んでみせる。レイチェルはほっと息を吐いた。  「良かった。お姉ちゃんおかしくなっちゃったのかと思った」  「こら、失礼よレイチェル。言葉には気をつけなさい」  「はーい」  けらけらと、楽しそうにレイチェルは笑う。エリスも微笑んでいたが、不意にその瞳から涙が零れ落ちた。  「お姉ちゃん?」  「ッ……ごめんなさい、何でも、ないから」  口元を押さえ、エリスは顔を背ける。心配そうに近寄ってきたレイチェルに顔を見られないように、エリスは妹を抱きしめた。  「お姉ちゃん?」  「大丈夫よ、レイチェル。何も心配しなくていいから」  「お姉ちゃん、泣いてるの? どこか痛いの? 誰かにイジめられたの?」  「心配いらないわ、レイチェル。怖がることも心配することも何もないの。あなたのことはお姉ちゃんが守ってあげるから。だから、あなたは安心して笑っていてくれればいいの」  レイチェルの背中に回された両腕に力が篭る。レイチェルは少し戸惑いながらも、エリスにもたれかかる。  「うん……ありがとう、お姉ちゃん……」  エリスの腕の中、レイチェルは無垢な赤ん坊のように目を閉じる。絵画の聖母のように微笑むエリスの瞳が、むき出しの刃のような危うい光を放つ。  (そう……私はあなたを守ってみせる。他の何を犠牲にしてでも、必ず……!)  目の前で閉まっていくスライド式のドアの陰に潜みながら、サエンはいつになく真剣な顔をしていた。  ドアの上にはエリス・クロードのネームプレート。見つめるサエンの視線は、石のように固い。  「あれ、何やってんだサエン」  不意に、通路の向こうから声がかかる。シェルドとショウを従えたジュナスが、近付いてくるところだった。サエンは振り向きながら、いつもの軽薄な笑顔を作る。  「いや、エリスちゃんを探してたんだけどさ」  「あー、やっぱりか。俺らも探しててさ。ケイは医務室にいるって言ってたのに、いないんだもんなぁ。部屋にいるのか?」  サエンはちらりとドアに目をやり、大袈裟にため息を吐いた。  「いるならとっくに入ってるって」  「そしてたたき出されてる頃だね」  シェルドが身も蓋もない相槌を打つ。サエンは静かに肩を竦め、  「じゃあ、俺は他のとこ探してみるわ」  と、三人に背を向けかけたが、  「サエン」  ジュナスに呼び止められて立ち止まった。  「何だ?」  振り向く。ジュナスの瞳が、真っ直ぐにサエンを見つめていた。  「何かさ、危ないことしようとしてないか?」   「……別に」  二人の視線が、一瞬だけ交錯する。ジュナスは特に追及することなく、「そうか」と引き下がった。  「……シェルドさん、危ないことって何なんでしょう?」  「さあ。盗聴とか盗撮とかじゃ」  「おいこらお前ら聞こえてるって……ところで、何でお前らがエリスちゃんを探してたんだ?」  「あー、それは……」  言いにくそうにショウが口を開きかけたとき、ジュナスたちのずっと後方……廊下の角から、人影が一つ這い出てきた。  「……見つけたぞ」  最高に不機嫌でドスの聞いた声。三人が一斉に振り返る。金棒を持った鬼の影……いや、釘バットを持った女の影が徐々に大きくなり、やがて怒り心頭といった表情のジェシカ隊長が廊下の先に現れた。  「撃墜数最低のシェルド、被弾数最高のジュナス、損傷率最高のショウ……」  フッ、と笑う。  「キサマら全員性根から叩き直してやる」  「勘弁してくださぁぁぁぁい!」  三人は脱兎の如く駆け出した。そちらの方向に向かおうとしていたサエンは、今や影も形も見えない。  「くっそー、あいつ逃げやがったな!?」  「ショウ、何だかんだで僕らが一番危ない真似をしてる気がするよ」  「そ、そうですね……エリスさんにかくまってもらうつもりだったのに」  「ええい、チョコマカ逃げるな貴様ら! 勝手に持ち場を離れたサエンの分も含めて、全員大人しくアタシのサンドバックになれ!」  「うわ、ひでぇ本音!」  「自分が撃墜数でエルフリーデさんに勝てなかったからって」  「大人気ないですよね」  「そんなに潰されたいかキサマらぁぁぁぁぁ!」  叫び声を撒き散らしながら、第二小隊の四人が廊下の先に消えていった。その騒動の最中にあっても、エリス・クロードの私室は不思議な沈黙に包まれていた。